大琳派展 継承と変奏(1)

 2008/10/07(Tue)
 今日は朝一番で、本日より始まりました大琳派展に行ってきました。いやー、私も平成館は開館当初からの付き合いですが、あの会場丸ごと全部が琳派尽くしというのはさすがに圧巻です。一度入ってしまうともう見るのに夢中で、おかげで一通り見終わった時にはすっかりくたくたでした…ははは。
 ともあれ、全体の紹介等は多分他のブロガーの皆様がこれからしてくださると思いますので、千尋は例によって欲望に忠実に(笑)酒井抱一にターゲットを絞った感想にしたいと思います。また今日の分一回きりではとても済みそうにないので、まずは今回初観覧分を中心に。

・「遊女立姿図」(ファインバーグ・コレクション)
 画集等で存在自体はお馴染みでしたが、今回初めて出会った作品。実を言えば浮世絵はあまり興味のない分野なのですけれど、肉筆画はものによるようで、この絵も素直に綺麗だなと思いました。(しかし『新潮日本美術文庫』では某会社所蔵になってるんですが、一体いつ海外流出したんですかこれ…)

・「月に秋草図屏風」(山種美術館)
 意外や意外、山種はこれまで随分通っているのに、何と今回初観覧です。抱一にしては非常にリアルなタッチの鶉がとても可愛らしく、金地にどーんと映える(笑)アーモンド形の黒い月も印象的。

・「雪月花図」(MOA美術館)
 MOAは光琳の紅白梅図目当てで何度か行ってるので、この絵は割合見る機会に恵まれています。琳派というより円山四条派風ですが、特に山桜の何ともいえない風情が素直に綺麗で、大好きな作品の一つです。

・「柿図屏風」(メトロポリタン美術館)
 これも初観覧の里帰り作品。予想通り、というか予想以上の渋さでした。(笑) モチーフや構図は抱一らしい一方で、画面全体に漂う荒涼とした侘しさがちょっと珍しい感じです。

・「青楓・朱楓図屏風」
 これも存在自体は大分前から知っていますが、見れば見るほど「…本当に抱一?」と疑心暗鬼になってしまう作品。個人的にはこれこそ其一作だという方が納得できるんですが…はてさて。

・「桜に瑠璃鳥図」「菊に小禽図」「柿に目白図」「芦に白鷺図」
 おなじみ亀田綾頼賛のシリーズ。単独でなら何度か見ている作品もありますが、5点中実に4点が揃ったところを見るのはさすがに初めてでした。(それだけにフリア本が欠けているのが悔しい;) 元々は後7点あるのでしょうが、今後何かの機会に見つかって欲しいですね。

・「白絖地梅樹下草模様」(国立歴史民俗博物館)
 これも意外に見る機会の少ない作品で、久しぶりの再会でした。しかも今回の展示では着物の前の方からも見ることが出来るので、また印象が違って見えて面白かったです。(ちなみに光琳の冬木小袖も同様でしたが、こちらは帯の跡の痛みがちょっと目立ってました。^^;)


 ところで一応図録も買って一通り目を通しましたが、案の定というかやっぱり抱一さん、「お殿様らしい我侭で其一や周囲の人々を振り回したに違いない」なんて書かれてました。どうも東博の皆様は抱一に何やら含むところがあるようですが(^^;)、その我侭?のおかげで光琳研究は今でも大いに恩恵に預かってるんですから、そこのところはもう少し素直に感謝してくださいよー。(いや確かに色々思い込み激しいところもあったようですけどね)
 またもうひとつ、「其一の止まる時間」と題する小論の最後に、かの「夏秋草図屏風」の製作を手がけたのは其一ではないかと匂わせるような一文がありましたが、これは非常に気になります。あれは何しろ光琳作「風神雷神図屏風」の裏絵として描かれたという代物で、ましてや抱一は光琳の熱烈な追っかけであの絵の模写までしてるんですから、そんな人生でも恐らく最大級の栄誉を(いかに有能な弟子だったとしても)当時30にもならない若い其一に譲ったとはちょっと信じられないのですよね。また私が抱一の絵で(とりわけ問題の夏秋草図で)目を惹かれる点の一つが金泥を使った細い線(水流や葉脈など)なんですが、あのしなやかな優美さは其一の直線的なシャープさとは随分違うと感じるのですけれど、どうなんでしょう?

 ともあれ、今月21日から出品予定の「十二ヶ月花鳥図」(ファインバーグ・コレクション)もその意味では何か其一っぽい作品がちらほら混じってるので(笑)、今後の研究と評価が気になるところです。今回宮内庁本等他の十二ヶ月花鳥図はあいにく出ませんが、もう一つくらいシリーズ全部揃ったものと並べてみたら、きっと面白かったでしょうね。(特に畠山記念館本はなかなか揃って見られないので、今後に期待)

 以上、抱一以外にもたくさんの素晴らしい作品を心行くまで堪能した後、本館常設展の琳派小特集も見てきました。しかし光琳や乾山、俵屋宗雪等はともかくとして、尾形宗謙の書と抱一の手紙があったのにはびっくり仰天、思わずガラスケースに張り付きそうになってしまいました。(笑) 特に宗謙の書の美しいことといったら、光悦にも引けを取らないような見事さでこれまた惚れ惚れです。(さすが光琳と乾山の父というべきか、血は争えないですねー) 平成館の特別展とはまた一味違う面白さなので、こちらもぜひお見逃しなく(^^)


  尾形宗謙

  (尾形宗謙作「和歌巻」部分。光悦流の素晴らしい達筆でした)


 そうそう、最後に久しぶりでミュージアムショップへ行ってびっくり仰天したのですが、何と光琳作冬木小袖のミニチュアがあるのですね! とても綺麗で可愛くて欲しい~!と思ったのですが、お値段実に5万円…そ、それはちょっと厳しい…;(5千円の仁清作茶壷でさえためらってるのに。涙)

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コメント
千尋様こんばんは。早速のTBをありがとうございました。
論文のお話は私もびっくりしました。この前に出光で出た下絵なども其一の関与ということになるのでしょうか。今回、其一がブレイクしそうな感じはしますが、ちょっとああいう書き方をされると抱一ファンとしては悲しいですよね。どなたか反論を!

日曜日、琳派、抱一の話をお伺い出来るのを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。
【2008/10/10 22:35】 | はろるど #GMs.CvUw | [edit]
はろるど様こんにちは、いつもありがとうございます。
私も抱一の作品がどこまで真作でどれが代作かは全然見抜ける自信はないのですが、さすがにあれだけは違うだろうというか、正真正銘の抱一作であってほしいです。何しろ13年前、同じ東博であの屏風に出逢って一目惚れしたのが私の抱一追っかけの始まりでもありますので…
ともあれ、明日のオフ会、こちらこそよろしくお願いいたします!
【2008/10/11 07:11】 | 飛嶋千尋 #EvGjErPc | [edit]












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