雨の夏草 風の秋草

 2011/09/18(Sun)
 本日の日曜美術館は、お久しぶりの酒井抱一でした。現在姫路にて開催中の特別展がいよいよ来月には千葉へやってくるとあって、生誕250年の抱一イヤー締めくくりとして大変楽しみです。しかも今回は「大回顧展」というだけあって、国内に存在する抱一作品の大半を一挙に見られる凄いものなのですよ。番組に登場した「波図屏風」(静嘉堂)やこの春堪能した「紅白梅図屏風」(出光)、またペンタックス所蔵?の「月に秋草図屏風」などは残念ながら出ませんが、今まで存在は知っていても実物に接する機会のなかった作品が目白押しで、これは抱一ファンたるもの絶対見逃すわけには行きません。ああ、10月が今から待ち遠しい…!(本当は姫路へも行きたかったんですが、さすがにちょっと無理そうです。^^;)


夏秋草図1
おなじみ「夏秋草図」。千葉市美術館にもやってきます!


 さて話戻って日曜美術館ですが、今回はタイトル通り代表作「夏秋草図屏風」をメインに据えつつ、抱一の画業をその生涯と合わせて辿る形式でした。中でも抱一自身の語りという形を取った演出は今まで見たことのないもので、最初の科白がいかにも江戸っ子のちょっとべらんめえ風な、落語を思わせる砕けた口調だったのにはちょっとびっくり。しかも声が永井一郎氏(!)というのにまた驚きましたが、庶民文化に親しみ自由気ままに生きたと言われる抱一さんのイメージを考えると、なるほど似合っていなくもないかと面白かったです。(でもやっぱり時々ちょっと「弾けすぎ」のような気も…笑)

 ともあれ、若い頃の浮世絵を描き町人たちと交際した時代から、やがて時代の変化や兄の死、その後の出家を経て光琳と出逢い、そして自らの画風を確立していくまでの生涯がとても判りやすく紹介されていました。特にハイライトの「夏秋草図」の解説は、去年の「美の巨人たち」よりもう一歩踏み込んで、制作の背景や表の「風神雷神図」との対比性等も詳しく説明されていたと思います。特に色使いが「風神雷神図」と共通しているという点は、言われないと意外に気がつかないものですよね。(私は以前何かの本で読みましたが、母がこれに驚いてました)


天上の神々から地上の草花への変奏。
夏秋草図3 夏秋草図2
緑は風神の体、白は雷神の体、赤と群青は風神雷神の衣装に通じる。


 それにしても改めて、酒井抱一という人は絵も大変魅力的ですが、ご本人の生涯もまた非常に興味をそそられる面白い人ですよね。名門大名家出身でありながら町人たちと交際し、百年も昔の絵師尾形光琳に傾倒して自ら百回忌と大回顧展まで開いてしまった(笑)等々、色々な意味でこんな楽しい画家はちょっと他に知りません。昔から言われるように、あの頃の芸術家としては相当に自分の好きなように生きられた人だったのでしょうね。

 とはいえ、抱一さんは抱一さんなりに苦労がないわけではなかったでしょうし、特にその作品を見る限り、俵屋宗達や伊藤若冲のようにただ「絵を描くのが楽しくてたまらない」屈託のなさはあまり感じられません。さりとて中途半端なセンチメンタルさに酔っているだけならそれが嫌味で鼻につきそうなものですが、抱一の作品、とりわけ夏秋草図の世界に満ちている、あの不思議な物悲しさを漂わせた風情は一体どこから来たものなんでしょうか。若い頃の俳諧では結構羽目を外した姿も伺えますし、また抱一の交流した人脈は実に幅広く、ひたすら絵だけに没頭した偏屈な人物というわけではなさそうなのです。
 もっともあるいは玉蟲敏子氏のおっしゃる、武家と町民の二つの世界の「あわい」に生きた抱一だからこそ、結局はどちらにも属し切れなかった彼の内奥に潜む孤独がその源かもしれません。それが同時代に生きたどんな絵師よりも、決して逢うことの叶わない光琳という先達へのあれほどの情熱の一因でもあったのだろうかと、番組を見終わってからふと思いました。

 なお今回驚いたのが、番組ゲストが何と歌舞伎俳優の坂東玉三郎氏だったことでした。何故に玉三郎さんと抱一?と思っていたら、何と玉三郎さんは抱一の大ファンで、ご自分でも抱一の絵をお持ちなんだそうです。(!) そういえば数年前の大琳派展の座談会にも出ておられましたが、まさか作品を所蔵するほどお好きだとは知りませんでした。う、羨ましい…!(ちなみに細見美術館の細見氏とも、抱一絡みでお友達だとか)
 で、玉三郎さんが抱一に興味を持たれたそもそものきっかけは、歌舞伎の「与話情浮名横櫛」の中で抱一の掛け軸について触れる科白があって、それでどんなものだろうと思ったのが最初なんだそうです。そういえば抱一さんは七代目団十郎とも親しかったというくらいで、ご本人が歌舞伎と縁があったんですよね。

 ともあれ、今日の放送は来週9/25夜にも再放送されます。見逃してしまった方は、ぜひお忘れなく!


 関連リンク
  ・生誕250年記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌 2011年10月10日(月・祝)~ 11月13日(日)
   ※この後細見美術館へ巡回予定

 関連過去ログ
  ・闇はあやなし梅の花
  ・可憐な四季の花と小鳥たち
  ・今年は酒井抱一!
  ・月明かりの草花
  ・夏の雨、秋の風
  ・幸せな人か、それとも

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コメント
『酒井抱一』で検索してここへ参りました。
私は姫路市立美術館から徒歩5分のところに住んでいるにもかかわらず、第3期の今日になってようやく足を運んだのですが、いやぁ~、抱一、良かったです!!

琳派には惹かれていたし、細見美術館へも行ったことがあります。抱一が地元ゆかりの絵師だということも知っていました。でも、なんだかぐずぐずしてたらもう会期終盤で台風の中あわてて行ってきたという次第。

解説よりここの文章が面白くって、そうそうそういう視点で語って欲しかったのよ、とうれしく思いました。

何度でも行けるという友の会に入ったので、終了の10月2日まで毎日行こうかな~なんて思っています。

また来ますね~
【2011/09/21 19:59】 | 姫路市民 #ZHSmrVpI | [edit]
初めましてこんにちは、コメントありがとうございました。
姫路展は私もこの機会に行きたいと思っていたのですが、節電やその他もろもろもありやむなく断念しました。しかしその分、千葉はとことん堪能してやろうと考えて、私も千葉市美術館友の会に入ってます。(^^) 今回のように国内の抱一作品がこれだけ集まる機会はめったにないですから、どうぞ心ゆくまで堪能してきてくださいね。



【2011/09/23 22:04】 | 飛嶋千尋 #- | [edit]












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