可憐な四季の花と小鳥たち

 2011/02/18(Fri)
 1/27、久しぶりの畠山記念館へ「生誕250年 酒井抱一―琳派の華―」(2011/1/22~3/21)を見に行ってきました。
 この畠山記念館は小さいながらなかなか琳派コレクションの充実した美術館で、特に抱一は旧水野家の「十二ヶ月花鳥図」を所蔵していることから、前から注目していた所でもあります。しかし何しろこぢんまりとした美術館のため、せっかく十二幅揃いの掛け軸なのになかなか一度に見ることができず、大規模な琳派展があるたびに出品してくれないかとじりじりしていました。
 それが今回、前期(1/22~2/17)と後期(2/19~3/21)の半分ずつではありますが、珍しくまとまって見ることができるチャンスにようやく巡り合えるというのですから、抱一ファンとしてはこれは絶対見逃せません。いつもそれほど混むところではないのですけれど、珍しく平日に休暇をいただいたので、早速勇んで行ってきました。
 今年は何と言っても抱一生誕250年記念とあって、十二ヶ月花鳥図のみならず、何と畠山記念館所蔵の抱一作品がすべてお目見えというのですから豪勢です。大きな作品では「富士見業平図屏風」「四季花木図屏風」の二つがあり、その他にも二幅対の「風神雷神図」(後期)など、存在は知っていてもなかなか拝見する機会のないものが多く、朝一番で人もまばらだったのを幸いゆっくりじっくりと堪能してきました。

 さて問題の十二ヶ月花鳥図は、以前に一月と三月のみ見たことがあります。その時も椿の真っ赤な花の鮮やかさや、絶妙なバランスで咲く山桜の気品ある美しさに見とれましたが、今回一月~六月まで揃った姿を改めて見て、保存状態の大変良好なことに感心しました。
 思えばこのシリーズは宮内庁、出光美術館、プライスコレクション(前半後半)、ファインバーグコレクション等色々と見てきましたが、嬉しいことにどれも皆本当にいい状態で現在まで残っています。惜しいことに亀田綾瀬賛のセット?だけは散逸状態ですけれど、それでも細見美術館(桜に小禽図)や山種美術館(飛雪白鷺図)所蔵の各作品もやはり大変綺麗な状態で、畠山のセットも同じであったことを改めて嬉しく思いました。
 それから今回、単眼鏡でまじまじと見ていて初めて気がついたことがひとつあります。
 抱一の十二ヶ月花鳥図は、俵屋宗達から始まる琳派の特徴でもある華麗な四季の草花図の流れを受けたものですが、宗達や尾形光琳の作品には殆ど登場しない小動物たちが数多く見られます。中でも鳥の絵などは、メジロやヒバリなどの小さな鳥たちのつぶらな黒目がちのまなざしが本当に愛らしく、見るたびつい微笑を誘われずにはいられません。しかもよくよく眼を凝らすと、くちばしの根元のぽしゃぽしゃっと生えた数本の毛までも、抱一は丹念に描き込んでいるのですね。(絵が遠いとなかなか肉眼では判らないのです)
 抱一の絵は全体に琳派としては比較的淡白なあっさりとしたタッチのように見えますが、草花はもちろんそうした鳥や虫の姿もひとつひとつ丁寧に描いていて、日頃から彼がそうした対象をよく観察していただろうことが想像されます。恐らくは住まい兼アトリエであった雨華庵の小さな庭先や、よく出入りしていたと伝えられる向島百花園で友人たちとのんびりくつろいでいた折などにも、抱一の周りには彼が描いたささやかな自然が溢れていたのでしょう。自分の身近で同じ時間を生きている小さな命たちへの抱一の愛情がそこには見えてくるようで、緻密に構図を計算し理想化して描いた繊細な美の世界であるのも確かですが、抱一の小鳥たちは見ているこちらも何だか優しい気持ちになれるように思います。

 ところで今回は抱一以外の琳派作品もかなり出ていますが、その中でちょっと驚いたのが、お馴染み本阿弥光悦・俵屋宗達コンビによる「小謡本」でした。
 私が見た時には「高砂」の巻頭が展示されており、銀泥で描いた大きな蔦の葉が下絵となっているのですが、この銀が殆ど焼けもなく実に美しいのです。何しろ宗達作品は江戸初期という古いものですから、出光で見た蓮下絵和歌巻等のように銀泥も黒ずんでしまっているものが多いので、まさかこんなに綺麗に描かれた当時に近い状態を残しているものがあるとは驚きでした。確かに形態は巻物と冊子という違いはあるものの、冊子の方が空気に触れにくく保存に適していたということなんでしょうかね?

 ともあれこの展示、入替で2/19からは後期が始まるので、もう一度見に行かねばなりません。「十二ヶ月花鳥図」(後半)や「風神雷神図」は言うまでもないですが、「賤が屋の夕顔」も鄙びた情景をさらりと描いた風情が好きな作品ですし、鈴木其一の「向日葵図」も実は見たことがないので楽しみです。それに畳の御座敷でお茶をいただきながら、光琳や抱一をゆっくり楽しめるのは何と言ってもここだけの贅沢ですね。


追記:
 余談ですが今回初めて見た「四季花木図屏風」は、桜の木はともかくその下に咲き乱れる草花が抱一にしては何だかごちゃごちゃしているような印象を受けて、ちょっと意外でした。光琳風を学び始めた初期の頃のものなのかとも思いましたが、抱一特有のしなやかに伸びる蔓などの描写がないことや、朝顔の描き方が白い五本の筋の入った普通にリアルなものであるところなどから見て、もしかすると部分的に(あるいは全部)其一に手伝わせたものだったりして…?(笑)

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