今年は酒井抱一!

 2011/02/12(Sat)
 昨年末からばたばたしていて、気付けばすっかりご無沙汰してました(苦笑)。というわけで、いよいよ2011年は待ちに待った酒井抱一生誕250周年です! そのトップを切る出光美術館の「琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―」、もちろん早速行ってきました。

 さて今回、前半が俵屋宗達・尾形光琳メインの<煌めく金の世界>、後半が抱一以下江戸琳派による<転生する美の世界>ということで、ひとつで2回美味しいなかなか贅沢な構成です。これは最低でも4回は行かねばなるまいと意気込んで、まずは前半、1/10と2/4の2回に分けて行ってきました。
 前半はその名の通り華やかな金に溢れた作品が多く、とりわけ目を引いたのは今まであまり見た覚えのなかった伝光琳作「紅白梅図屏風」です。お馴染み熱海のMOA美術館所蔵の国宝屏風とはまたちょっと趣の異なる構成で、左に紅梅と白梅が三本、右に白梅が一本というちょっとアンバランスな並びに意表を突かれましたが、やはり豪奢とも言えるダイナミックは確かに光琳の作風かと思わせる華麗なものです。今回ポスターにも使われただけあって、前半の展示品の中でも一際目立った存在感があり、研究者と思しき男性が学芸員さんのお話を熱心に聴いている姿も見受けられました。
 ところで最初の観覧の際、お馴染み光悦・宗達による「蓮下絵百人一首和歌巻」等を見ていて、ちょっと残念だなと思ったのがキャプションに書かれた和歌の説明がないことでした。で、観覧後アンケートに「(くずし字が読み取れないので)できれば和歌の説明も欲しいです」と書いたところ、2回目の時にはちゃんとキャプションがついていて、これは大変嬉しかったです。もちろん光悦の芸術的な達筆は意味が判らなくても充分に美しいし惚れ惚れしますが、せっかくだからどんな歌なのかを理解した上で見たいですよね。

 さて第二弾、後半戦はいよいよ待望の真打ち抱一登場です。
 と言っても、前半にも大好きな「白蓮図」があってこれはこれで大変嬉しかったのですが、出光所蔵の銀屏風「紅白梅図」が何と言っても特に好きな作品のひとつなので、早速初日の2/11に飛んで行きました。
 出光さんは「紅白梅図」の他、珍しい雛屏風の「四季花鳥図屏風」や東博所蔵の「夏秋草図屏風」の下絵など、抱一の銀屏風またはそれに関係する作品を特に多く所蔵していますが、今回のようにそれを一度に見ることのできるのはなかなか貴重な機会です。中でも「紅白梅図」は冴え冴えとした銀地に描かれたほっそりとした紅白の梅の姿が何とも瀟洒で、名前は同じでも光琳作とはまるで違う艶で静謐な風情が何度見ても飽きず、「夏秋草図」の次に思い入れの深い作品ですね。
 なおこの「紅白梅図」も「夏秋草図」同様に何かの裏屏風だったというのは抱一ファンならご存知でしょうが、一体どんな屏風が表にあったのか、残念ながら今のところ判っていません。ただ恐らくはやはり華やかな金屏風であったことは間違いないでしょうけれど、抱一さんのところですから、きっとかなり意表を突かれるような取り合わせだったのでしょうね。

 ところで今回、抱一の一番弟子こと鈴木其一の作品もかなり出ていましたが、「秋草図屏風」はまだ抱一の影響色濃い頃と思われる繊細な構図ながら、銀地がすっかり焼けて黒ずんでしまっているのが残念でした。以前にも少し触れましたが、抱一の銀屏風は何故か殆ど変色がなく美しい銀色のままで、昔から不思議で仕方がありません。現代ならプラチナ箔という方法もありますけれど、抱一さんは一体どんな処理をしていたんでしょうね?
 なお今回、図録にも「抱一と銀」と題した論文が掲載されていました。このテーマは特に玉蟲敏子氏の「夏秋草図屏風 追憶の銀色」で詳細な考察がされており、今回の論文も大体同じように「銀地=月光」の暗示であることや、与謝蕪村等同時代の他の画家による銀屏風の例が紹介されています。しかしそれらは皆モノクロームの水墨画で、抱一のように鮮やかな濃彩ではありません。考えてみれば、銀屏風が月の光であるなら確かにモノクロの方が現実の景色に忠実な描き方であるはずですし、もちろん抱一とてそれはよく承知していたと思うのですが(現に静嘉堂の「波濤図屏風」は殆ど水墨のみですし)、にもかかわらず何故彼は「夏秋草図」や「紅白梅図」のような華麗とも言える銀屏風を(それも裏屏風に)描いたのでしょうか。

 とはいえ、一見判りやすいようで実はそんな風に奥深く謎の尽きない絵師である所もまた、抱一の魅力のひとつなのかもしれません。しかし展示の解説に、「名門大名家出身の粋な若旦那だった抱一はさぞ女性にもてただろう」とあったのにはつい笑ってしまいました。今回の会場を見ていても、実に熱心に作品に見入っている女性ファンは私以外にも結構ちらほらいらしたようで、現代でも抱一さんは女性に大人気なんですね。(何しろ先日発売の別冊太陽も、研究者4人の内3人が女性ですし。笑)



夏秋草図屏風 追憶の銀色-絵は語る (13)
夏秋草図屏風-追憶の銀色-

(1994/01)
玉蟲 敏子

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酒井抱一(別冊太陽)酒井抱一
(別冊太陽 日本のこころ)

(2010/12/17)
仲町 啓子

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 ところで2/11は連休初日にも関わらず、東京では珍しい吹雪のせいか夕方の美術館はがらがらでした。(笑) おかげでこちらは大変ゆったり作品を楽しむ事が出来まして、特に最後の30分ほどは紅白梅図の前にべったり貼りつき状態、殆ど他のお客もいない中心行くまで一人占めの贅沢な時間を堪能させていただいて、そりゃあ幸せでした。最後まで快く?観覧させて下さった美術館スタッフの皆様、ありがとうございました。会期中に最低でもあと1回は見に行きますので、よろしくお願いします!


 関連過去ログ
   ・哀しいほど美しい
   ・月明かりの草花
   ・夏の雨、秋の風
   ・若冲と抱一
   ・大琳派展 継承と変奏(7) 余白と移ろいの美
   ・大琳派展 継承と変奏(5) 十二ヶ月変奏曲
   ・大琳派展 継承と変奏(4) 見えぬものこそ
   ・大琳派展 継承と変奏(3) 風神の風
   ・大琳派展 継承と変奏(2) 講演会覚書
   ・大琳派展 継承と変奏(1)
   ・幸せな人か、それとも
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コメント
こんにちは。はじめまして。コウと申します。
私も昨日(2/27)出光美術館に行ってきました。詳しくはないのですが酒井抱一の作品に強く興味を惹かれました。それにしても千尋さんは、博学ですね。ビックリです。当日は、その後に大倉集古館に行き主に横山大観の作品を鑑賞しました。
それでは、また。
【2011/02/28 23:11】 | コウ #mbKkRmwY | [edit]
>コウさん
初めましてこんにちは、コメントありがとうございます。
抱一さんは今を去ること15年前の一目惚れから始まって結構長い付き合いで、美術には素人ですが特に熱心に追っかけしてきました。その間に琳派美術展の当たり年も何度かありましたが、今年は抱一生誕250年を謳う美術展が予想以上に多く、私もとても楽しみです。コウさんも機会があればぜひ、畠山記念館(現在後期、3/21まで)や秋の千葉市美術館(10/10-11/13)で開催の抱一展へも行ってみてくださいね。

【2011/03/02 22:10】 | 飛嶋千尋 #- | [edit]












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