奇妙奇天烈摩訶不思議

 2009/06/24(Wed)
  だまし絵展

 ただ今好評開催中の「奇想の王国 だまし絵展」(2009/6/13-8/16)、前回のロシア展でのひっそりと静かな様子が嘘のように、Bunkamuraは初日から大人気だそうです。千尋は21日に朝一番で駆けつけたので、幸いまだ静かな館内でゆっくり作品を楽しんできましたが、11時過ぎくらいにはもうかなりの混雑でした。しかも今回は何だか親子連れも多くて、美術展というより上野の科博のような客層でしたね。

 さて、今回の見所その一は何と言っても、初来日のアルチンボルド作「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」です。

  アルチンボルド・ルドルフ2世

 この絵を初めて本で見た時はびっくり、よくまあこんなものを考え付くものだとむしろ呆れましたが、いざ実物を目にしてみるとさすがの迫力で圧倒されます。絵の中で使われた植物は実に63種に上るそうで、もう一つの工房作「水の寓意」もそうですが、あれだけの種類をひとつひとつ正確に描いたということは、よほどしっかりと観察した上で綿密に配置も考えたのでしょうね。気が遠くなりそう…

 ところで今回「だまし絵展」と一口に言っても、内容は意外と多様多彩でして、いわゆる正統派?のトロンプ・ルイユだけでなく、錯視を利用したトリックアートがあるかと思えばマグリットやデルヴォー、ダリのような幻想絵画風の作品、さらには初めて見るさや絵まであって、いやよくこれだけ集めたものだと感心しました。子どもの頃に「目のひみつたんけん」(平山明義、文研出版)という絵本を読んで以来こういう世界は大好きで、絵本に登場するような博物館があったら楽しいだろうなあとよく思いましたが、今回の「だまし絵展」はまさにあの博物館のようで、叶うことなら子どもの時にああいう体験を一度してみたかったですね。

 それにしても、今回は酒井抱一や鈴木其一も出ているという情報をTakさんより聞いて「え、どうして抱一?」と思いましたが、描表装のことだったのですね! 言われてみれば確かにあれも一種のだまし絵で、特に其一は好んで多くの作品を残していたっけ、と納得、ちょっと笑ってしまいました。
 ただ今回、琳派以外の画家の作品も色々と見て感じたことですが、其一の場合はご本人の性格でしょうか、描表装でも割と生真面目というか、あんまり遊び心とか茶目っ気とかはないように思います。その点其一の娘婿でもあった河鍋暁斎の「幽霊図」や、今後登場予定の柴田是真の「滝登鯉図」は思わずぷっと吹き出しそうな、一ひねり利かせたユーモアが何とも楽しくて印象的でした。また伝・抱一作「蓬莱山・春秋草花図」はお馴染みの花鳥図の端正な出来栄えはもちろん、描表装の風帯のごく微妙なよれ具合がまた抱一っぽさを感じさせて、弟子作の可能性もあるかもしれませんができればご本人作であってほしいです。

 最後に、今回特に期待していた一人・マグリットの作品では、「囚われの美女」が初めて見るものでした。別な絵で似たようなしかけの作品は見たことがありますが、その解説の「キャンバスの向こうの風景は、本当に描かれた風景と同じなのだろうか」という指摘に、まさしく目から鱗が落ちる思いでどきっとしました。以来マグリットの絵の中でも、特にこの手の作品は見るたび楽しいようでいて、どこかちょっと怖い感じがしてなりません(それがまた魅力なんですけれども)。
 今回の図録で谷川渥氏が「だますふりをして結局だまさないからだまし絵なのである。この逆説の上に、だまし絵は成り立っている」とする一方、マグリットについては「「これは~である」と断言しようとする絵画がだまし絵であるとすれば、マグリットの作品は、だまし絵からもっとも遠いところに位置する」としながらも、それゆえに絵画世界の危うさを証明しているのだと述べていて、そうそう、まさにそれだよね、と読んでいて思わず頷きました。エッシャーのような矛盾を巧みに潜ませた非日常世界ともまた違う、一見日常的なのに実は騙されているのかも、と思わせる(しかもそれはあくまで可能性であって断定的ではない)あの謎めいた沈黙の世界はマグリットならではで、今回のだまし絵展の中でもひと味違っていて一際印象に残りました。

  白紙委任状
  おなじみ「白紙委任状」

 ともあれ、振り返ればこういうテーマの美術展は実に1994年の「視覚の魔術展」(新宿伊勢丹美術館)以来です。当時の図録を見るとアルチンボルド作「水の寓意」やダリ作「スルバランの頭蓋骨」、また歌川国芳の作品など、今回と同じものも結構出ていたのですが、さすがに大半はすっかり忘れてました(^^;)。今回の「だまし絵展」は展示替えもあることですし、今度は忘れないようにもう一度じっくり見てこようと思います。

P.S
 今回タイトルで一番笑ったのは、アメリカン・トロンプルイユの1作「エサをやらないでください」(笑)でした。また同じく「インコへのオマージュ」は、ごく普通にインコの肖像画?としても素敵でしたね。
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