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姫君たちの再会 ~名画を切り、名器を継ぐ~

 2014/10/11(Sat)
 9/20、根津美術館開催の「名画を切り、名器を継ぐ」(2014/9/20-11/3)の初日へ行ってきました。
 この美術展は最初ちらっと情報を見た時には「(例によって)渋そうな美術展だな」としか思わなかったのですが、その後友人から「佐竹本(三十六歌仙絵巻)の斎宮女御が出るらしいよ」と情報がありました。
 何しろ私は佐竹本追っかけですので、それは是非とも行かねば!と即決断。しかし秋は他にも気になる美術展が満載のため、スケジュール調整が難しい所です。さていつ頃行こうかなとのんびり考えていた矢先に某美術館でチラシを発見、おお、ちょうどよかったと早速一枚いただき、ぱらりとめくって次の瞬間凍りつきそうになりました。

 何と、今回は佐竹本の斎宮女御だけでなく、小野小町と小大君も同時に展示されるというのです(!)。

 いやはや、これには心底仰天、それは是が非でも初日に駆けつけねば!と今度こそ追っかけ魂に火が付きました(笑)。この三点は以前にも幾度か拝見していますが、ただでさえ滅多に見られない佐竹本のそれも五人しかいないお姫様を一度に三人まとめて鑑賞できる機会など、そうそう出逢えるものではありません。事実、私も十年程前から展示の機会があればなるべく見に行っていますが、お姫様が二人以上揃った所などまったく憶えがないですから、恐らく最低でも十年に一度か、下手をすれば数十年に一度くらいの大変貴重な機会なのは間違いないでしょう。
 ちなみに斎宮女御は個人蔵、小野小町は東博寄託、小大君は大和文華館所蔵ですが、根津美術館さんはご自身では佐竹本を所有しているわけでもないのに、よくまあこの三人を同時期にまとめて集めることができたものです。以前から叶うものなら一度お姫様五人が揃ったところを一目見たいと思っていただけに、喜び勇んで駆けつけた当日、右から小町、斎宮女御、小大君と三枚並んだ姿を前にした時にはただもう感無量、感激で涙が出そうでした。本当に本当にありがとうございます根津美術館さん!

 というわけで、結局翌週9/27も再び飛んで行ったのですが、二度目にもう少し落ち着いてじっくりと眺めているうちに、ふとあることに気が付きました。
 佐竹本三十六歌仙絵巻の並びは本来、三十六人の中で斎宮女御が十番目、小大君が十六番目、小町が二十四番目です。ということは、あの絵巻が切断されずに本来の姿で残されていたとしたら、今回のようにお姫様ばかり三人が並んだ姿というのは逆に絶対見ることはできないのですよね。(ちなみに残る二人の伊勢は二十番目、中務はトリの三十六番目です) 絵巻が切断されてしまったのは大変に残念ではありますが、こういう姿で見ることができることだけはちょっと感謝してもいいのかなと、今回初めて思いました。
 なお元は絵巻ですが、現在は皆掛け軸に表装されており、所有者がバラバラでしたから当然表装もそれぞれ異なっています。斎宮女御は青鈍(?)、小町は鬱金、小大君は淡い灰色がかった緑をそれぞれ基調にしており、恐らく表装の裂(きれ)も相当に貴重なものを使っているのでしょう、特に斎宮女御は元は能装束と思われる華やかな裂を大胆に使っているのが印象的でした。
 ともあれ、お姫様三人揃っての展示は期間限定で、10/13の連休最終日まで見ることができます。しかしさぞかし混雑するかと思えば、私が二回行った時はどちらもかなり空いていたので、もしかすると知らない方も多いのかもしれませんね。

 それにしても、斎宮女御はここ十年間で結構頻繁に美術展に出ていますし、小町もさりげなく(笑)ちらほらと東博の常設展に登場しているのですが、伊勢と中務の二点はまったくお目にかかったことがありません。美術展所蔵ではないようですから、恐らく所有者が大事にしまいこんでいるのでしょうが、三十六人全員とまでは言わずとも、本当に一生一度でいいからせめて五人のお姫様が勢揃いした所を見てみたいものです…(溜息)

 ところでそもそも今回の美術展は、絵や書の断簡や焼き物の破片を様々な形で補修したり作り変えたりした品々が主役なので、焼き物も面白い作品が色々と揃っています。中でも中国の青磁は「台北國立故宮博物院」でも何て綺麗なんだろうと思いましたが、透明感のある青緑色が本当に溜息の出るような美しさでした。美術展は10/13で前半終了、後半は展示替えでまた別な佐竹本(大中臣頼基)やその他の作品も登場しますので、お楽しみに!

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