カウントダウンスタート!

 2009/06/29(Mon)
 長らく休館中の根津美術館再スタートまで、今日であと100日となりました。そして待ち遠しい復帰第一弾は、国宝「那智瀧図」を中心とした自然がモチーフの絵画・工芸作品中心とのことで、光琳の燕子花が出るかどうかは判りませんが、花鳥画もたくさん見られそうです。リニューアルして一体どんな感じになったのか、新山種美術館ともども楽しみですね。

 なお問題の燕子花図屏風は来年に恒例初夏の展示が予定されているそうで、しかも今度はリニューアルしただけあって、琳派コレクション一挙公開というファンには嬉しい豪華版です。もっとも根津さんは酒井抱一作品はあまり持っていないようで、私としてはそれだけがちょっと残念なのですが、ともあれ琳派好きの皆様は来年にご期待ください。

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絵画の中のモード

 2009/06/27(Sat)
  
ファッションから名画を読む (PHP新書)ファッションから名画を読む (PHP新書)
(2009/02/14)
深井 晃子

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 最近本屋でこんな本を目にし、何となく買ってみたのですが、読んでみたらいや実に面白かったです。元々泰西名画の中のファッションにはそれなりに興味はあったのですが、気合を入れてお勉強するところまではいかず、また判りやすそうな入門書も知らなかったので、今回は久々にいい本に出会えました。

 それにしても、この本を読んでみて改めて、本当に今まで自分が絵の中の人々の服飾について何も知らなかったんだということをつくづくと思い知らされました。

 例えば、ブロンズィーノの有名なこのメディチ家大公妃の肖像画。

  エレオノーラ・ダ・トレド
  (「エレオノーラ・ダ・トレドとジョヴァンニ・デ・メディチ」)
 
 エレオノーラの豪奢な絹のドレスの袖からちらちら覗く白いもの、これって何とリネンの「下着(シュミーズ)」なんだそうです。わざと切れ目を作って下の布地を覗かせる「スラッシュ・ファッション」というものだそうで、この頃の王侯貴族の肖像画では嫌というほど見かけますが、まさかそんなものだとは知りませんでした。
 この他にも、ナポレオン時代に流行したモスリン・ドレス(レカミエ夫人のあの悩ましい衣装です)や、印象派以降一気に花開いた人口染料、一人では身につけられないコルセット等々、女性はもちろん美術好きの男性にも十分楽しめる内容ではないかと思います。なおこの本で取り上げているのはもっぱら西洋、特にイタリアやフランスが中心ですが、こんな風な解説付きであれば、風俗画という意味では近い日本の浮世絵ももっと面白く見られるのかもしれないなと思いました。

  レカミエ夫人
  (本で紹介されていたのはダヴィッドの絵でしたが、敢えて贔屓のジェラール作をご紹介)

 ところで、第5章「ディテールは語る」では16世紀のヴェネチアのモードの話が出てきますが、当時は「カルカニーニ」という高い上げ底サンダルのような婦人靴が大流行していたそうです。著者は何故こんなものが流行したのか、その理由は判らないとしていますが、そこで思い出したのが例によって、塩野七生氏の「海の都の物語」でした。

  
海の都の物語〈3〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)海の都の物語〈3〉
ヴェネツィア共和国の一千年
(新潮文庫)

(2009/05/28)
塩野 七生

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 つい先日、念願の文庫版がようやく3巻分冊となりましたが、以前「ヴェネツィア女性のおしゃれ」でも紹介した第7話「ヴェネツィアの女」の中に、以下のようなエピソードがあったのです。

 1526年1月17日の元老院は、「贅沢取締委員会」の提出した議題を討議していた。それは、女たちの服の丈が長くなりすぎたので、それを法で規制しようというのである。(中略) ひきずる長さを、ある者は半ブラッチョ(90センチ)が適当だと主張し、またある者は、四分の一ブラッチョ(45センチ)で十分だという。議員たちはもう笑いだし、大笑いのうちに投票が行われた。多数決で決まった長さは、四分の一ブラッチョのほうであった。帰宅した議員たちは、さぞかし、奥方のふくれっ面に直面させられたことだろう。とはいえ、女たちはもちろんこんな法律に屈服しはしない。靴のかかとを高くすることによって、対抗したのである。


 というわけで、塩野説によればどうやらそもそもの目的は、ドレスの裾を少しでも合法的に長くするためというところにあったようです。私にはこれまた正直言って理解不能な世界の話ですが、ともあれそんなことを知った上で改めて向き合うと、よく知っていたつもりの絵でもまた色々楽しい発見がありそうですね。
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華麗なる700年王朝

 2009/06/26(Fri)
  
エリザベート (上) 美しき皇妃の伝説 (朝日文庫)エリザベート (上) 美しき皇妃の伝説 (朝日文庫)
(2005/09/15)
ブリギッテ・ハーマン

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 この秋、国立新美術館で開催されるハプスブルク展がそろそろ話題になり始めていますが、中でも注目の的はやはり↑この本の表紙等でもおなじみ、エリザベート皇后(通称シシィ)の肖像画でしょう。ミュージカル等ですっかり日本でも有名になったこの伝説的な美貌の女性は、ヨーロッパでも古今の王族の中で群を抜く人気者の一人だそうで、王族好き(というか系図好き)の千尋にとっても、今度の来日は大変楽しみです。
 ただ、大抵の方とはちょっと違って、私にとってシシィというと、真っ先に思い浮かべるのは実は↓この肖像画なんですね。

  エリザベート皇后

 同じくヴィンターハルター作のこの肖像画、初めて知ったのは「黄昏のウィーン―ハプスブルク王朝の終焉」(須永朝彦、新書館)という本で、その時は小さな白黒写真でしたが、何て美しいんだろうと感動、まさに一目惚れしてしまったのです。その後何とかこれをカラーで見られないものかと願い続けて、ようやくインポートのポスター集で発見、ポスター本体よりもお金かけて綺麗に額に入れてもらったのでした(笑)。数多い肖像画の中でも髪をほどいた姿は珍しく、ちょっと出典は忘れましたが、フランツ・ヨーゼフ皇帝はこの絵を一番素晴らしいと言ってとても気に入っていたそうです。(「ハプスブルク家の女たち (学研グラフィックブックス)」にも小さいですがカラー写真あり)

 ところでハプスブルク家関連の美術展は日本でもちょくちょく開催されてますが、私が憶えているもので過去最も凄かったのは、1992年の「栄光のハプスブルク家展」(東武美術館)だったと思います。この時もマリア・テレジアの少女時代の肖像画(後年のあの姿からは想像もつかない美少女ですが。笑)や、ベラスケスの青いドレスのマルガリータ王女、マリー・アントワネット愛用の机等々、今見てもなかなか豪華な内容でした。しかし今度のハプスブルク展は間違いなくそれを上回る内容になりそうなので、始まる前にしっかり勉強しなおしておかねばなりませんね。

 というわけで、一応私が知る限りの範囲でですが、お勧めの関連本をいくつかご紹介。

  
ハプスブルク家 (講談社現代新書)ハプスブルク家 (講談社現代新書)
(1990/08)
江村 洋

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 そもそも私が系図にのめりこんだ決定的きっかけが実はこの本で、ハプスブルク家700年の華麗で波乱万丈な歴史を初心者にも判りやすく紹介しています。江村先生は日本のハプスブルク家ブームの先駆者とも言える方だそうで、できれば合わせて「ハプスブルク家の女たち (講談社現代新書)」もどうぞ。(なお、もう少しコアなファンのために「中世最後の騎士―皇帝マクシミリアン1世伝」、「カール5世―中世ヨーロッパ最後の栄光」、「マリア・テレジアとその時代」、「フランツ・ヨーゼフ―ハプスブルク「最後」の皇帝」等の伝記もあります)

 また、他に面白かったものとしては、これまたちょっとコアですが菊池良生の「ハプスブルク家の人々」「ハプスブルクをつくった男 (講談社現代新書)」「イカロスの失墜―悲劇のメキシコ皇帝マクシミリアン一世伝」や、塚本哲也の「エリザベート―ハプスブルク家最後の皇女 (文春文庫)」「マリー・ルイーゼ―ナポレオンの皇妃からパルマ公国女王へ」もお勧めです。特に塚本氏のエリザベート(注・シシィの孫娘)の伝記は、彼女の波乱の生涯と激動の20世紀ヨーロッパの歴史を見事に活写した傑作で、ちょっと長くて大変ですが一読の価値ありですので、ハプスブルク家ファンの方はぜひ読んでみてください。

 以上、他にもまだまだ面白い本はたくさんあるのですが、何せ我が家にあるハプスブルク家本だけでも30冊を越えるので、敢えてちょっと昔の本からピックアップしてみました。(というか、最近は日本史にかまけてあまり本買ってないのです…苦笑) よって残念ながら既に品切の本もありますので、興味のある方は図書館で探してみてくださいませ。

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奇妙奇天烈摩訶不思議

 2009/06/24(Wed)
  だまし絵展

 ただ今好評開催中の「奇想の王国 だまし絵展」(2009/6/13-8/16)、前回のロシア展でのひっそりと静かな様子が嘘のように、Bunkamuraは初日から大人気だそうです。千尋は21日に朝一番で駆けつけたので、幸いまだ静かな館内でゆっくり作品を楽しんできましたが、11時過ぎくらいにはもうかなりの混雑でした。しかも今回は何だか親子連れも多くて、美術展というより上野の科博のような客層でしたね。

 さて、今回の見所その一は何と言っても、初来日のアルチンボルド作「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」です。

  アルチンボルド・ルドルフ2世

 この絵を初めて本で見た時はびっくり、よくまあこんなものを考え付くものだとむしろ呆れましたが、いざ実物を目にしてみるとさすがの迫力で圧倒されます。絵の中で使われた植物は実に63種に上るそうで、もう一つの工房作「水の寓意」もそうですが、あれだけの種類をひとつひとつ正確に描いたということは、よほどしっかりと観察した上で綿密に配置も考えたのでしょうね。気が遠くなりそう…

 ところで今回「だまし絵展」と一口に言っても、内容は意外と多様多彩でして、いわゆる正統派?のトロンプ・ルイユだけでなく、錯視を利用したトリックアートがあるかと思えばマグリットやデルヴォー、ダリのような幻想絵画風の作品、さらには初めて見るさや絵まであって、いやよくこれだけ集めたものだと感心しました。子どもの頃に「目のひみつたんけん」(平山明義、文研出版)という絵本を読んで以来こういう世界は大好きで、絵本に登場するような博物館があったら楽しいだろうなあとよく思いましたが、今回の「だまし絵展」はまさにあの博物館のようで、叶うことなら子どもの時にああいう体験を一度してみたかったですね。

 それにしても、今回は酒井抱一や鈴木其一も出ているという情報をTakさんより聞いて「え、どうして抱一?」と思いましたが、描表装のことだったのですね! 言われてみれば確かにあれも一種のだまし絵で、特に其一は好んで多くの作品を残していたっけ、と納得、ちょっと笑ってしまいました。
 ただ今回、琳派以外の画家の作品も色々と見て感じたことですが、其一の場合はご本人の性格でしょうか、描表装でも割と生真面目というか、あんまり遊び心とか茶目っ気とかはないように思います。その点其一の娘婿でもあった河鍋暁斎の「幽霊図」や、今後登場予定の柴田是真の「滝登鯉図」は思わずぷっと吹き出しそうな、一ひねり利かせたユーモアが何とも楽しくて印象的でした。また伝・抱一作「蓬莱山・春秋草花図」はお馴染みの花鳥図の端正な出来栄えはもちろん、描表装の風帯のごく微妙なよれ具合がまた抱一っぽさを感じさせて、弟子作の可能性もあるかもしれませんができればご本人作であってほしいです。

 最後に、今回特に期待していた一人・マグリットの作品では、「囚われの美女」が初めて見るものでした。別な絵で似たようなしかけの作品は見たことがありますが、その解説の「キャンバスの向こうの風景は、本当に描かれた風景と同じなのだろうか」という指摘に、まさしく目から鱗が落ちる思いでどきっとしました。以来マグリットの絵の中でも、特にこの手の作品は見るたび楽しいようでいて、どこかちょっと怖い感じがしてなりません(それがまた魅力なんですけれども)。
 今回の図録で谷川渥氏が「だますふりをして結局だまさないからだまし絵なのである。この逆説の上に、だまし絵は成り立っている」とする一方、マグリットについては「「これは~である」と断言しようとする絵画がだまし絵であるとすれば、マグリットの作品は、だまし絵からもっとも遠いところに位置する」としながらも、それゆえに絵画世界の危うさを証明しているのだと述べていて、そうそう、まさにそれだよね、と読んでいて思わず頷きました。エッシャーのような矛盾を巧みに潜ませた非日常世界ともまた違う、一見日常的なのに実は騙されているのかも、と思わせる(しかもそれはあくまで可能性であって断定的ではない)あの謎めいた沈黙の世界はマグリットならではで、今回のだまし絵展の中でもひと味違っていて一際印象に残りました。

  白紙委任状
  おなじみ「白紙委任状」

 ともあれ、振り返ればこういうテーマの美術展は実に1994年の「視覚の魔術展」(新宿伊勢丹美術館)以来です。当時の図録を見るとアルチンボルド作「水の寓意」やダリ作「スルバランの頭蓋骨」、また歌川国芳の作品など、今回と同じものも結構出ていたのですが、さすがに大半はすっかり忘れてました(^^;)。今回の「だまし絵展」は展示替えもあることですし、今度は忘れないようにもう一度じっくり見てこようと思います。

P.S
 今回タイトルで一番笑ったのは、アメリカン・トロンプルイユの1作「エサをやらないでください」(笑)でした。また同じく「インコへのオマージュ」は、ごく普通にインコの肖像画?としても素敵でしたね。
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やまと絵とは何か

 2009/06/22(Mon)
 昨日6月21日はBunkamuraの「奇想の王国 だまし絵展」(2009/6/13-8/16)と、出光美術館の「日本の美・発見II やまと絵の譜」(2009/6/6-7/20)を見てきました。どちらもとても面白く見応えがあり、書きたいことはたくさんあるのですが、まずはやまと絵の方から。

 今回まず一番目を引かれたのは、英一蝶(はなぶさいっちょう)の「桜花紅葉図」と題した二幅対の作品でした。右が山桜に燕、左が紅葉に鶺鴒で、どちらも枝からひらりと短冊が下がり、大きくとった余白にひとつふたつ散る花びらや葉が何とも洒脱な余情を感じさせて、遠目で見た時は一瞬酒井抱一かと思ってしまいました(笑)。一蝶は名前こそ知っていたものの、作風までは頭に入っていなかったのですが、芭蕉や其角と親交があり自らも俳諧を嗜んだというところなど、ますます抱一さんと共通していたようです。というより、時代から言って抱一さんの方が一蝶の影響を受けた可能性も考えられるわけで、これは今後気をつけてチェックしておこう、と心に決めました。(そしてちょうどタイミングのいいことに、板橋美術館で9/5-10/12に一蝶の特別展があるそうです。楽しみ♪)
 またもう一人、これまた名前は知っているけれど実は今まであんまり好みではなかった、岩佐又兵衛もなかなか面白かったです。古典的なやまと絵とは大分雰囲気の違う源氏や業平も印象的でしたし、特に「職人尽図巻」は画面全体が何とも大らかな笑いに満ちていて、画家自身の戦国の乱世に翻弄された生涯とは随分異なる世界に正直意外な気がしましたね。又兵衛というと「嵯峨野明月記」に登場するやや狷介なあのキャラクターがそのまま焼き付いてしまっていたのですが、こんな絵も描けたんだ、と何だかちょっとほっとしました。

 さて一方、正統派古典的なやまと絵の方はと言えば、まずびっくりしたのが「小柴垣草紙」です。知る人ぞ知るマイナー作品ながら、斎宮に興味のある人なら恐らくすぐに思い当たる問題作(笑)で、正直題名を見た時は一瞬ぎょっとしました。まあさすがに今回の展示はごく普通の場面でしたが、これについては田中貴子氏の著作「聖なる女―斎宮・女神・中将姫」(人文書院)に「密通する斎宮」というテーマでなかなか面白い考察があったので、興味のある方は読んでみてください。
 もう一つ、狩野探幽の大作「源氏物語 賢木・澪標図屏風」は過去何度か見たことのある大好きな作品ですが、前に立って見ていたら隣の若い男性のグループが面白いことを言っていました。「これってさ、こっちとこっちのこの鳥居が線対称になってるんだな」…なるほど、それは全然気がつきませんでした! 前からどうしてこんな全然関係のない話が対になっているのか不思議に思ってたのですが、そういう図柄の構図が理由だったんですね。(そしてこの考え方で見ると、静嘉堂所蔵の俵屋宗達作「関屋澪標図屏風」も確かに構図がそっくりでした)

 ところで今回、一番頭を悩ませた作品は冷泉為恭の二幅対の掛軸絵「雪月花図」です。
 左の枕草子は「雪」、すなわち有名な「香炉峰の雪」の場面で一目瞭然なのですが、右の「月花」の源氏物語「若菜」がどの場面なのか、どうもよく判らない。遠くの山の上に月がかかり、寝殿の中央に身分高い貴婦人らしき女性がひとりと、その側に控える女房たち、そして外の簀子(濡縁)に公家と武官と少年が控えているだけの絵柄で、図録を見てもそれ以上の解説はないのです。よく見ると武官の男性が髭もじゃで、それならこれは髭黒大将かとも思ったのですが、玉鬘が光源氏の四十賀を祝う場面(旧暦1月23日)にしては藤の花が咲いているのはおかしいし…はてさて。
 結局、当日は担当の学芸員さんが不在でお話も聞けなかったのですが、帰宅後改めて調べてみて、もしかすると朧月夜の君と光源氏の再会の場面だったのかな、と気がつきました。逢瀬なら時間は夜、しかも朧月夜はかつて桜花の宴の宵に源氏と出逢った女性ですから、その想い出に繋がる「月」「花」を暗示しているとも考えられ、「花宴」も含むという解説もそれで判ります。…しかし「若菜」で花といえば通常は柏木が女三宮を垣間見した場面が来るでしょうに、こんな判りにくい絵柄一目で判る人はちょっといないですよ為恭さん。
 それからもうひとつ、問題の朧月夜らしき女性のポーズを見た時あっと思ったのですが、姿勢はもちろん畳の上に伏して几帳を側に立てたところまで、かの佐竹本斎宮女御の絵にそっくりでした。さすがに近代らしく構図は平安時代よりずっと遠近法も正確で、それでいて王朝趣味豊かな世界は平安時代に心底傾倒していた為恭らしく、とても高雅な気品のある美しいやまと絵でしたね。(何しろ昔新日曜美術館で「平安オタク」なんて言われた人ですし。笑)

 この他にも、古くは奈良時代の絵巻から浮世絵や土佐派まで、作品数の割にはジャンルも実に多彩な内容でした。今回佐竹本の人麻呂と僧正遍照がなかったのが残念でしたが、いつもながら手持ちの所蔵品だけでこれだけの内容の展示ができるあたり、さすが出光さんです。

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平安マニアの参考書

 2009/06/20(Sat)
 平安時代に関するお勉強の参考資料は色々とありますが、素人としてはやはり綺麗な写真や図解が多く、説明もやさしく判りやすいものが嬉しいです。ただし大型本などはちょっと高価でためらったりもしますが、それだけに手に入れるとまた喜びもひとしおですよね。
 そんなわけで、今日は手持ちの中から2冊ご紹介。

  
源氏物語 六条院の生活源氏物語 六条院の生活
(1999/07)
五島 邦治

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※表紙は「梅枝」より
 明石姫君の裳着


 いつもおまけ画像でお世話になっている、風俗博物館さんのいわば写真集といってもいい本。残念ながらつい最近品切になってしまったそうですが、古本で探せば見つかることもあります(※ただAmazon出品はちょっと高すぎるので、古本屋サイトなどで探した方がいいかも)。
 この本に収録されている写真はちょっと昔のもので、お人形さんも今博物館で使われているぽっちゃり顔タイプではなく、お雛様風の細面のタイプです。実は私はこちらの方が好きなので、その意味でも嬉しい1冊なのでした。(なおお雛様タイプは今でも、博物館以外での出張展示などに時々使われているそうです)
 また「常夏」の釣殿で涼む場面では本物の氷と稚鮎(!)を使ったり、「初音」の明石訪問の場面では夕暮らしい茜色の光をあてて撮影していたりと、実際の展示では見られない撮影ならではセッティングを楽しめるのも、この本の見所です。一度見に行ったことがあるから見なくていいという方もいるかもしれませんが、決してそんなことはないですよ!


  
素晴らしい装束の世界 いまに生きる千年のファッション素晴らしい装束の世界
いまに生きる千年のファッション

(2005/11)
八條 忠基、森脇 章彦

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 こちらはもちろん実物大(笑)で、著者は衣紋道(いわゆる平安装束の着付け専門家)のプロの方とあって、これもさすがの充実した1冊です。中身は写真よりも図解の方が多く、上の風俗博物館さんのようなものが好きな方にはちょっと物足りないかもしれませんが、細かい名称や文様、色、しきたり等の解説は非常に詳細です(特にかさね色目の説明は、この手の解説書では千尋が知る中でもっとも判りやすくしかも美しいものでした)。また現在装束や小物を作っておられる職人さんたちのお話などもあり、本当に盛りだくさんな内容なので、本屋や図書館で見かけたらぜひ読んでみてください。

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穴があったら入りたい

 2009/06/18(Thu)
 大変恥ずかしながら、今まで時折いただいておりました拍手の見方を知らず、全然見ていませんでした(大汗)。今までコメントくださった皆様本当に申し訳ありません、そして遅ればせながらありがとうございます。
 大分前のものもあるので、ご本人も既にお忘れかもしれませんが、今後は気をつけてチェックするよう心がけますので、懲りずにまたお声をかけてやっていただければ嬉しいです。

 ああそれにしても、本当に本当にすみませんでした~~~~。
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行くだけでは終わらない

 2009/06/18(Thu)
美術展ファイル

 美術展の楽しみは展示内容そのものにとどまらず、購入した図録や複製画、ポストカード等のグッズ類も、後々までの大事な思い出です。
 千尋も例に漏れず色々買いまくっては保管場所に頭を悩ませてますが、特に大変なのが、このチラシ&入場券の整理保管。グッズや図録を買わなくても、これだけは絶対に欠かさないものですし、美術展のチラシっていい紙使ってるだけに重いので、うっかり箱にまとめておくと重くて手に負えないんですよね。
 ともあれ紆余曲折を経て、現在では行った順で年ごとにクリアファイルに保管してます(以前は入場券を別にしていたのですが、判りやすく一緒に入れることにしました)。それにしてもこれが毎年増えること増えること、重いわ場所は取るわでもう大変(それでなくても既に図録の置き場もないのに)。しかもチラシ1枚にしておけばいいものを、念のためにと毎回必ず3枚もらってくるので、余計かさばってしょうがないのでした。やれやれ。

 ともあれ、最近では図録の通信販売等もありますが、こうした「確かに自分で行ってきた」記念というのは後で見ていても楽しく懐かしいものです。デザインとしても素敵なものも多いですし、いっそ額に入れておきたいようなものもあったりしますが、一方で最近はチラシも予告版と本番の2種類あるところも珍しくないので、ますます大変なのでした…

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夢の続きは

 2009/06/14(Sun)
 今日日本橋高島屋へ細見美術館展のために出かけたのですが、その前に偶然通りかかった6階の美術画廊でびっくりしました。
 何と、つい昨日TVで見たばかりの藤田喬平のご子息で、同じくガラス作家の藤田潤氏の作品が並んでいたのです。しかも今回初めてお父さんの代表作「飾筥」に挑戦されたそうで、喬平氏のあの華麗さとはまた違うすっきりとシンプルなモダンさのある作風だったのが印象的でした。
 そしてさらに、今週から来週にかけて新作展も予定されているそうです。期間が大変短いのでちょっと厳しいですが、興味のある方は是非どうぞ。

 「時間(とき)を込める筥(はこ) 藤田潤ガラス新作展」
  日本橋高島屋6F美術画廊、2009年6月17日(水)~23日(火)

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夢を入れる箱

 2009/06/13(Sat)
  fujita.jpg
  (2008年テーブルウェア展出品「紅白梅」)

 今日の「美の巨人たち」は、大好きな藤田喬平の「飾筥シリーズ」でした。
 藤田喬平の名を初めて知ったのは、惜しいことにご本人が既に亡くなった後で、確か新日曜美術館の「箱」をテーマにした回でした。作品そのものの美しさもさることながら、何を入れるのかと言われて「夢を入れます」と答えたという有名なエピソードにすっかり痺れてしまい(笑)、以来すっかり大ファンです。
 そもそもガラス作家自体あまり多くは知りませんが、それにしてもこれほど「夢のように綺麗」という言葉がぴったりの作家は絵画でも彫刻でもなかなか見かけません。もちろん飾筥だけではなく、いかにも現代風の作品やヴェネチアングラス風の作品も数多く手掛けていてそれはそれでまた素敵なのですが、この人の作品で一番魅力的なのはやっぱり飾筥だよねーと、番組を見て改めて思いました。
 琳派大好きだった藤田の飾筥は「ガラスの琳派」と呼ばれているそうですが、元々最初の「菖蒲」の着想も光琳の「燕子花図」から得ており、他の作品も琳派というかどこか王朝趣味の雅やかな気品高さを感じさせて、本当に何度見ても惚れ惚れします。とりわけ、好んでいくつも作った「紅白梅」などは、豪奢な金と黒に散る華麗な紅白の点がまさしく光琳の「紅白梅図」を思わせますよね。

 さてこの飾筥、一見した限りでは技巧的に何がどう難しいのかは素人には判りませんが、2007年日本橋高島屋開催の回顧展の図録には、最初の作品「菖蒲」ができるまで「数え切れないほどの試行錯誤を繰り返して完成した」とあります。かのエミール・ガレも、あの金箔を刷り込んだ美しいガラスを生み出すまでには随分苦労したとどこかで聞いた覚えがあり、こうした職人の手も借りて作品を作り出すような作家の常でもあるのかもしれませんが、藤田については特に「よくぞこんな素敵なものを作ってくれた、ありがとう!」と思わずにはいられません。叶うものなら小さい作品(香合なんかも作ってるんですよ)でいいからひとつ欲しいなーとさえ思うのですが、しかし何しろ人気もあり既に亡くなった方ですから、さぞかし高価なんでしょうねえ…(とほほ)
 そうそう、今回番組で一番驚いたのが、今もご家族の手元に残るという最晩年の飾筥「白凰」を開ける場面でした。箱を取る時の「音」がガコっというか、やけにリアルに大きく響いて、あーこれ本当にガラスなんだ、と判ってちょっと衝撃でしたね。展示されている作品を見るだけでは判りませんが、何しろガラスですから重さもきっとかなりのものでしょうし、触れたらどんな感じなんだろう、とふと思いました。

 ところで、藤田の美術館が今回番組の中でその様子が紹介されていましたが、敷地のたたずまいや館内の展示があんなに素敵なところだとは知りませんでした。松島はさすがに遠くてなかなか無理かな~と思っていましたが、あれを見てしまったらもう、ぜひぜひ一度行きたいです!

 参考リンク・藤田喬平ガラス美術館
 http://www.ichinobo.com/museum/


  飾筥
  (2007年「藤田喬平 雅の夢とヴェニスの華」展図録。表紙の作品は「湖上の花」)

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塩野ファン必見!

 2009/06/09(Tue)
 今週末から仙台を皮切りに「古代カルタゴとローマ展 きらめく地中海文明の至宝」の全国巡回が始まるそうです。塩野七生作品の愛読者にはたまらない内容ですねー、うふふ♪
 というわけで、公式サイトと巡回スケジュールは以下の通り。

「古代カルタゴとローマ展 きらめく地中海文明の至宝」
 ・公式サイト:http://www.karutago-roma.jp/
 ・巡回スケジュール:
   仙台・仙台市博物館(2009.6.12-8.16)
   金沢・石川県立美術館(2009.8.29-9.20)
   東京・大丸ミュージアム東京(2009.10.3-10.25)
   岡山・岡山市デジタルミュージアム(2009.10.31-12.20)
   京都・京都文化博物館(2010.2.11-4.4)
   浜松・浜松市美術館(2010.4.17-5.30)
   宮崎・宮崎県総合博物館(2010.7月-9月)
   名古屋・松坂屋美術館(2010.10.23-11.21)

 それにしても、古代ローマはポンペイなどで日本でもおなじみですが、カルタゴを持ってくるというのはちょっと珍しい気がします。私は断然スキピオ贔屓ですけれど(笑)、とはいってもハンニバルもあれはあれで捨てがたい魅力のある人なので、どんな物が来るのか楽しみですね。
 というわけで、今回お勧めの参考書はもちろん↓こちら。

  
ローマ人の物語〈2〉― ハンニバル戦記ローマ人の物語〈2〉― ハンニバル戦記
(1993/08)
塩野 七生

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 なお、文庫版(全3巻)も出ています。

  
ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) 新潮文庫ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上)
新潮文庫
(2002/06)
塩野 七生

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お持ち帰りが大変

 2009/06/06(Sat)
 引き続き宿題中の「被物(かずけもの)」についてさらに調べてみたら、面白い情報に行きつきました。
「源氏物語の鑑賞と基礎知識No.18 初音・胡蝶・蛍」で、前回触れた「胡蝶」で夕霧が被物を賜った場面について詳しい解説がありまして、そこに「宇津保物語」で使者がたくさんの被物に埋もれそうになってよろよろしている場面の紹介があったのです(笑)。うわーやっぱりそうなるんですねー(あんまり雅やかじゃないと思うんだけど…^^;)。

 ところで問題の場面は、朱雀院から女一宮と尚侍への文使いをした蔵人についてのものなんですが、彼が賜ったのは女一宮からは「紫苑色の綾の細長一かさねと袴」、尚侍からは「唐綾の撫子かさねの細長、二藍の織物の唐衣、薄物の地摺りの裳、袴一具」だったそうです。ここでまたしても引っかかったのが「あれ、五つ衣は入らないのかな?」ということでして、果たして「女装束一領」という場合五つ衣は含まれないのかそれとも単に文中では省略されただけで実際は入っていたのか、そこまでは判りませんでした(ただ五つ衣が入らないとしたら、大分軽くなりそうではありますが)。
 ともあれ、可哀想な(笑)蔵人はただでさえしこたまお酒をふるまわれてすっかりへべれけ、よろよろ千鳥足で帰る途中にせっかくの被物も落としてしまい、仲忠が車を用意して運ばせてやったということでした。そうですよねえ、一人で持ち切れない時はそういうこともあったでしょうねえとこれは納得、疑問がひとつ氷解して嬉しかったです。実のところ宇津保の描写はやたらだらだらと長くてあまり面白くないため、以前挑戦したものの途中で挫折していたのですが、暇ができたら頑張ってまた読んでみます。

おまけ:

  細長姿

 風俗博物館2004年展示「若菜」より、玉鬘主催の源氏四十の賀の支度をする女房。
(細長:柳かさね、表着:桜かさね花立涌文、五つ衣:色々かさね?)

 見ての通りこの細長は、例の夕霧が賜ったあの衣装です。「細長」というだけあって、本当に裾がとても長いんですよ(ただ実際には史料が少なく、正確なつくりははっきりしないとか)。


 もう一枚:

  細長・後ろ姿

 後ろから見るとこんな感じ。袿の1.5倍くらい以上はありそう。
 裳唐衣でも裾さばきはかなり難しかったのに、こんなに長いともてあまして大変ですよね。


P.S
 …ふと思ったんですが、後ろの人に踏まれて転んだりとかしなかったんでしょうか?(笑)


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ベルニーニ来日!

 2009/06/04(Thu)
 しばらくチェックしていなかったのでうっかり見逃していましたが、今年秋から来年にかけて、京都国立近代美術館&東京都美術館へ「ボルゲーゼ美術館展」が来るそうです。ボルゲーゼ美術館と言えば日本ではそれほどメジャーではありませんが、世界屈指のルネサンス・バロック美術コレクションを誇る美術館ではありませんか! それもラファエロ作「一角獣を抱く貴婦人」や、つい先日大騒ぎしたベルニーニも「枢機卿シピオーネの胸像」がやってくるというのですから、これは興奮せずにはいられません。まだまだ先の話ですけれど、来年も見応えのある美術展が増えそうで楽しみですね。

ボルゲーゼ美術館展:ラファエロ「一角獣を抱く貴婦人」とイタリア美術の至宝(仮称)
京都国立近代美術館:平成21年10月31日(土)~12月27日(日)
東京都美術館:平成22年1月16日(土)~4月4日(日)

  ラファエロ・一角獣

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被物の謎

 2009/06/04(Thu)
 昨日の「旅立ちは普段着で?」に引き続き、本日は宿題その2です。

「被物」は「かぶりもの」ではなく(笑)、「かずけもの」と読みます。「禄(ろく)」とも言い、文のお使いや晴れの行事での舞などのご褒美として、身分高い人から臣下・家来に下されたり、また祝い事で引き出物として贈られたもののことです。源氏物語でもちょくちょく出てくる言葉で、衣類を与えることが多く、特に正式なものはやはり女装束一揃いということでした。
 しかしそれにしても、どうして女装束の方が格の高い下賜品になるのか、ちょっと調べてみただけではやっぱり判りません。装束一領ということは即ち女房装束の裳唐衣まで全部含めた本当に本格的な一式ということで、そりゃあさぞかし豪華な値の張るものではありましょうが、男性の衣装だって晴れの束帯一揃いは今なら1千万円以上くらい(!)になるとどこかで読んだ覚えがありますし、まさかお値段だけが理由ではないと思うのですが…はてさて。

 ちなみに源氏物語では、例えば「胡蝶」で夕霧が秋好中宮から禄を賜る場面があります。この時彼は既に四位の中将ですが、女装束をもらって一体どうしたのだろう、と改めて不思議に思いました。
 夕霧はまだ10代でしかも独身でしたし、そもそもこの時代、衣装は女性の家で夫たる男性のために調えるものであり、男性から衣装を贈られるというのは女性には逆に恥ずかしいことでさえあったらしいのです。だから恋人に贈るというのもなさそうですし(当時そうした賜り物をそのまま別な家へのプレゼントにしたりしたかどうかは不明ですが)、まさか夕霧程の権力も財力もある権門の御曹司が売ってお金に換えるというのも考えられません。さりとて妹(明石姫君)はまだ成人前、また養母の花散里に差し上げるといっても、彼女は「玉鬘」の衣配りを除けばむしろ衣装を調える側としてよく登場する人なので、これもちょっと考えにくいような気がします。
 で、あれこれ考えてみたのですが、もうひとつ「身近な女房に下げ渡す」というのはありかな、とふと思いました。夕霧も恋人一筋とはいえ、高貴な男性の常としてお手付き女房くらいはいたようなので、ちょっと気に入りの女性がいればそういうこともあったかもしれません(何しろ袿ならともかく、裳唐衣ともなれば自分で着るわけにはいかないし。笑)。
 ともあれ、百聞は一見に如かずということで、今回も風俗博物館の展示から。

  「胡蝶」の夕霧

  被物の細長を肩にかける夕霧。(風俗博物館2004年展示「胡蝶」より)

 ちなみに本文では「中将の君には、藤の細長添へて、女の装束かづけたまふ」とありますが、諸般の事情により(笑)展示の細長は柳のかさねでした。ただここでまた気になったのですが、文字通りに受け取ると、若い男性とはいえあのずっしり重い裳唐衣一式全部を一度に担がされたのか(!)と思ってしまいますよね? いくらなんでもそれはないだろうと思ったら、玉上琢禰著「源氏物語評釈」では実にさらっと「殿の中将(夕霧)は、女の装束と細長を肩に掛けて、はなやかに、紫の上の御殿へ渡る」とあり、しかも「女の装束は裳、唐衣、五つ衣などに紅の袴も入る」と述べていたのでした。…いや、それちょっとかなり大変だと思うんですが…
 さすがに玉上先生は十二単をお召しになったことはないでしょうが(笑)、千尋は一応あの重さを実際に体験したこともありますので、お伴とかが分担して運ぶようなことはなかったんだろうかと、これまた不思議です。…何だか今までいかに適当に読み流してきたかが段々暴露されてますが(苦笑)、解説書などでもそういうことは意外に書かれていないので判らないのですよね。

 そんなこんなで、肝心の法事のお布施までなかなか辿りつけませんが、多分系列としては同じような問題だと思うので、引き続き合わせて調べてみます。

 ところで細長といえばひとつ、前から気になっていたのですが、六歌仙等を描いた絵画の小野小町がよく細長らしき衣装を着ています。佐竹本の小町は明らかに裳唐衣ですが、何故小町は細長姿で描かれることが多いのでしょうね?(そしてまた課題が増えていく…^^;)

・参考リンク:源氏物語 『源氏物語』原文とその背景を読む
        「小袿と細長(3)重ね着・被け物」という記事で、被け物について詳しく触れています。


追加:2006年展示「若菜」の女三宮降嫁より

  若菜・女三宮降嫁の被物

 引き出物の禄を賜り退出しようとしている三位の公卿。裾を長く引いた正装の束帯で、肩にかけた禄は杜若かさねの袿でしょうか、祝い事らしく華やかですね。

さらに補足:
 色々調べていたら、「落窪物語」では男主人公が笛の褒美に帝の御衣を賜って帰宅した折、妻の落窪姫にそれを与える場面があったらしいです(昔読んだけどすっかり忘れた;)。帝からのご下賜品ともなればまた特別ですが、普通のお祝い事などでもこういう風に、家族にそれを贈る習慣はあったのでしょうか?(でもやっぱり夕霧は無理ですよね)

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旅立ちは普段着で?

 2009/06/03(Wed)
 先日「旅立ちの衣装」で宿題にしていた平安時代の死装束について、ようやく本で確かめることができました。著者いわく、源氏物語などを読んでいてもよく判らないという国文学系の研究者の話をよく聞くそうで、専門の方々でも皆同じような疑問を持つものなんですね。


  
日本喪服史 古代篇―葬送儀礼と装い日本喪服史 古代篇―葬送儀礼と装い
(2002/02)
増田 美子

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 さて問題の死装束ですが、まず結論から言ってしまえば、当時の死装束は今のような特別なものではなく、日常の衣装と殆ど変らないものであったようです(ただし使用済のものではなく、一応新品を葬送のために用意したらしいとのこと)。もっとも文献に記録の残っているもの自体がかなり珍しく、殆どが天皇・上皇・女院などの雲の上の方々ですけれど、ともあれ現在お馴染みの白い経帷子やそれに近いものではなかったらしいということは判りました(ということはあの頃の幽霊も、経帷子着てたりしたら嘘なんですね。笑)。普段着が死装束になるなんて今の感覚で考えると不思議な気がしますが、考えてみると、もっと古代には洋の東西を問わず、高貴な人々は華麗な装飾品に囲まれて葬られていたのだから、それに比べれば平安時代は大分質素になったと言えるのかもしれませんね。

 なお前回触れた後一条天皇の死装束はやはり薄紫の直衣に白い生絹の単重と袴で、これは天皇が亡くなったのが旧暦4月17日という初夏であったことから、季節に合わせてこのような衣装が調えられたということでした。またさらに時代下って、平安末期の皇嘉門院(崇徳天皇皇后・藤原聖子)の葬儀の際にはやはり新しい小袖で亡骸を覆い、その上に日常身に着けていた袈裟を重ねて、さらに新しい袷の袿で全身をすっぽり覆ったそうです。源氏物語の藤壺も出家の身ですから、やはり亡骸には袈裟も一緒に着せかけられて棺に納められ、鳥辺野かどこかで荼毘に付されたのでしょう。
 それにしても、あの時代は今のような火葬場なんてありませんでしたから、遺族たちは野辺送りでそうした衣装などが亡骸と共に燃えていくところも直接最後まで見届けたのでしょうか。源氏物語では具体的な描写は一切ありませんが、桐壺更衣の弔いの場面でも母親が悲しみのあまり錯乱しかける様が描かれていますから、やはりその有様は物語に描けるようなものではなかったことでしょう。

 ところで喪服についてひとつ面白かったのが、昔は白い喪服だったのが途中から黒に変わった理由でした。
 中国では喪服を「錫衰(しゃくさい)」と言い、「錫」は目の細かい白麻の衣のことだったのですが、日本でこの「錫」を金属の「錫(すず)」と誤解してしまったために、錫色即ち黒ずんだ墨染色が日本の喪服にも取り入れられてしまったということらしいのです。何だか笑い話のようですが、ともあれ奈良時代・養老律令の「喪葬令」に天皇の公式の喪服が「錫紵(しゃくじょ、紵は麻布のこと)」と定められ、平安時代には衣服ばかりか調度から何からすべて真っ黒なあの世界が常識となってしまったということでした。…何ともはや、まさに事実は小説より奇なりですね。

 そうそう、やはり前回ちらりと触れた浮舟の法要のために調えられた装束ですが、後で調べてみたらあれはお布施のためのものであろうとのことでした。しかしお布施ったって、通常貴族たちが禄として家臣などに授ける女装束ならまだ使い道もあるでしょうが、お坊さんが女物の衣なんてもらって一体どうするんでしょう? 原文では「女の装束一領」とある以上、略式だとしてもそれなりに本格的な衣装一揃いだろうと思うのですが、供養ならともかくお布施と言うのはやはり納得いかないです。
 というわけで、死装束はひとまず片付きましたが、入れ替わりに次回の宿題も決定してしまいました(笑)。このところ寝殿造についても調査中で忙しいのですが、何か収穫があればまた後日改めて。

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幻想の森から

 2009/06/02(Tue)
 来年5月から、既に日本でも恒例の「オルセー美術館展」が国立新美術館で開催されるそうです(2010年5月26日~8月16日)。さて今度はどんな目玉商品が来るんだろう、と記事を見に行って、次の瞬間飛び上がりました。

 ついについに、待望のアンリ・ルソー作「蛇使いの女」が来るそうです!!(大興奮)

  

 ルソーといったらこれ、というくらい大好きな作品で、お馴染みの熱帯風景はもちろんですが、このミステリアスさがたまりません。長年オルセー展があるたびに来ないかな来ないかなと思ってはがっかりしてきましたが、ようやく念願が叶うんですね~(^^)

 ともあれ、今度のコンセプトは「後期印象派以降」がメインとのことで、なるほどそれでルソーも入ってるのかと納得しましたが、これは今までなかなか来日してくれなかった憧れの作品だったので、もうこれ1点のためなら何度でも通ってやろうと今からわくわくしています。わざわざ海外へ出かけていかなくてもこうして色んな名画が向こうから来てくれるなんて、本当に幸せですね。

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御即位20年記念

 2009/06/02(Tue)
 今年は今上陛下御即位20年記念ということで、色々関連イベントも盛りだくさんのようです。というわけで、個人的に興味を引かれたものをいくつかご紹介。

迎賓館赤坂離宮前庭公開 平成21年11月11日~13日

皇居東御苑におけるご即位20年記念特別展 21年11月予定
  装束類、御料車・儀装馬車、盆栽、雅楽器等の特別展、馬車運行

宮内庁三の丸尚蔵館 御結婚50年記念及び御即位20年記念特別展覧会 21年夏~22年春

・御即位20年記念京都御所特別公開 21年秋季
  例年の一般公開の日数延長、装束類をつけた人形の展示等を実施

・御即位20年記念特別展「皇室の名宝 日本美の華」 平成21年10月6日~11月29日
  東京国立博物館、10月6日~11月3日(前期)、11月12日~29日(後期)

・国立博物館・美術館等の無料観覧(時期不明) 
  該当施設:国立科学博物館国立科学未来館国立民族博物館東京国立近代美術館
  京都国立近代美術館国立西洋美術館国立国際美術館国立新美術館
  東京国立博物館奈良国立博物館九州国立博物館飛鳥資料館(奈良文化財研究所)

・御即位20年記念特別展「第61回正倉院展」 21年秋、奈良国立博物館

 このうち東博で秋に開催予定の「皇室の名宝 日本美の華」は既にご存じのとおり、「前期と後期で全ての作品を入れ替える」という鬼のような(笑)特別展ですが、それだけに今まで見られなかったようなものも出てくるのではないかと大変楽しみです。また京都御所の特別公開もしばらくご無沙汰しているし、最近はずっと風俗博物館で欲求不満?を解消していましたが、やっぱりできることなら実物大の本物で見たいですよね!

 なお、上記のイベントは主に文部科学省関連のものです。この他にも関連行事はまだまだたくさんありますので、興味のある方は首相官邸公式サイトへどうぞ。(うわーこんなところにリンク貼るの初めてだわ。笑)

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気がつかなかった…

 2009/06/01(Mon)
 先日、瀬戸内寂聴氏の「女人源氏物語」についてちらっと触れましたが、その後改めて単行本の表紙を見てびっくりしました。
「あれ、加山又造さんだ!」
 …そういえば最初に読んだ頃は、まだ加山さんどころか日本画自体に殆ど興味がなかったので、全然知らなかったのです。しかも全5巻のうち2巻はまだ見たことのない「身延山久遠寺水鳴楼襖絵」から取ったものだそうで、加山さんの絵では珍しい鮮やかな紅葉の絵が印象的でした。久遠寺と言えば確か桜でも有名なところで、前から興味はあったのですが、加山さんの襖絵があるとなればますます行ってみたくなりました(でも山梨は遠い…)。

 ともあれ、他にもこの前見たばかりの「雪月花」の「雪」や「七夕屏風」など、いかにもなおなじみの加山さんの作品も使われていて、懐かしいなあと何だか嬉しかったです。もっとも千尋はその後橋本治氏の「窯変源氏物語」の方にはまってしまったので、おかげで今まですっかり忘れていたのですが、この機会にまた読み返してみようかな?

  


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