Date:2008/10/10 19:11
以前触れましたとおり、今回大琳派展を見るために(笑)東京国立博物館友の会に申込をしてきました。今まではずっとパスポートを買っていたのですが、大琳派展は4回でも5回でも行ってやるぞー!という意気込みで燃えているので、それなら友の会の方が絶対いいよねと決断したのです。しかし何ぶん初めての申込で、何だかちょっとどきどきしました。
というわけで、東博のサイトにも案内がありますが、ここで改めて簡単なご紹介を。
【東京国立博物館友の会】
年会費:10,000円
有効期限:発行日から1年
特典:平常展フリーパス
特別展チケット12枚
グッズ割引(5%、図録・書籍は除く)
レストラン割引(10%)ほか
http://www.tnm.go.jp/jp/guide/tomonokai/index.html

(申込でもらったチケット他一式)
さて、友の会の最大の強みは何と言っても、特別展のチケットが12枚も!もらえるという点です。普通のパスポートは各特別展1回限りですし、ペアチケットを買っても1枚1000円ですが、友の会の場合1枚約800円というお値段は、例えば根津美術館に燕子花図屏風を見に行くよりお安いのだから嬉しいですね。(笑) しかも同じ特別展に何度も使えるので、家族や友人同士、カップルなどでよく行く方は特にお勧めです。(全部使い切るのが無理でも、当日券価格なら7回で充分元は取れます)
なお私が今回踏み切った理由のもう一つが、来年春予定の阿修羅展なのですが、同じ時期にカルティエ展も開催と判ってますます万歳、これも行く気満々です。しかしこの調子で行くと、もしかすると一年かからずに使い切ってしまうかも…?(笑)
なお、特別展は当日に限り再入場もできるので、一度昼食やお茶で一服の後また改めて、というのも一つの方法です。平成館の中では鶴屋吉信のお菓子くらいしか食べられませんし、また特にお昼から午後にかけては会場は混雑しますから、疲れた場合は無理せずいったん会場を出てゆっくり休憩した方がいいかもしれませんね。(特に今回、抱一・其一エリアはソファも少なくて辛かったです;)
ちなみに友の会かパスポートを持っていれば、一度博物館を出てからでもまた戻ることができますが、友の会は東博内のレストランも割引ありなのでこれまた重宝です。博物館の近辺はあまり飲食店もありませんし、芸大や東京都美術館へ行った後でもう一度、というのでなければ館内で一日ゆっくり過ごすのもいいですね。(でも欲を言えば、もう一つくらい洒落た喫茶店が欲しいなあ)
というわけで、色々と大変お得な友の会なのですが、図録が割引対象外なのは非常に残念でした。サントリー美術館はもっとお安いレギュラー会員にも図録割引してくれるのに…けち。(笑)
そうそう、書き忘れてましたが現在、常設展で丸山応挙のわんころ襖絵を展示中です。あのキュートな子犬ちゃんたちは確か江戸博の応挙展にも出てくれなかったので、今回初めて見て大感激でした。うーん、やっぱり可愛い〜〜vv
Date:2008/10/09 22:14
今回の大琳派展にあたって、久しぶりに過去の琳派関連の美術展カタログを色々ひっくり返していたのですが、特に印象深かったのが2004年のRIMPA展(国立近代美術館)との違いでした。あちらはかなり思い切って、明治以降の下村観山、菱田春草、小林古径、横山大観等はともかくクリムト、ルドン、ウォーホルという意外な路線まで手広く取り込んでいましたが、今回はいかにも東博らしいというべきか(笑)どーんと手堅くオーソドックスな6人に絞り込んできましたよね。まあ海外の画家は私も今ひとつぴんと来なかったので、それならどこかで誰かが触れていた田中一光を入れて欲しかったなーと感じました。(というわけで、今回BRUTUSの特集で取り上げられていてちょっと嬉しかったり。^^)
そしてもう一人、観山や春草も確かにちらほらと琳派の影響を受けてはいますが、もっとそのものずばりで琳派チック?な神坂雪佳が今回抜けていたのは、正直ちょっと残念でした。そもそも雪佳は、最初に見た琳派展「日本の美「琳派」展一九九六」で例の金魚と衝撃の出会い(笑)を果たして以来、琳派関連ではよく目にしている画家の一人ですし、ほのぼの琳派な中村芳中とはまた違う微笑ましさの漂うあの雰囲気は結構好きなのです。最近では2003年の回顧展以降、あまりまとまった数の作品を見る機会に恵まれていませんが、あの愉快な金魚にはまた会いに行きたいですね。(^^)
ところで2003年の回顧展はちょっと思い出深いものでして、あの時は色々都合がつかなくてやっと最終日に飛んでいったら、図録が既に売り切れだったのです。(涙) うわーんそんなー、こんなにたくさん雪佳の作品をまとまって載せた本なんてないのにー!と大ショックだったのですが、何とその翌年の他でもないRIMPA展で、近代美術館のミュージアムショップに委託販売分が残っているのを発見、喜び勇んで購入したのでした。ありがとう近代美術館!
ともあれ、その後2006年の高島屋と去年の細見美術館はあいにく行きそびれてしまったので、次に会えるのはいつかなーと期待中です。しかしそれにしても抱一にしろ其一にしろ、単独であの回顧展くらいのレベルの特別展をやってくれると嬉しいんですけどねえ…
Date:2008/10/07 21:18
今日は朝一番で、本日より始まりました大琳派展に行ってきました。いやー、私も平成館は開館当初からの付き合いですが、あの会場丸ごと全部が琳派尽くしというのはさすがに圧巻です。一度入ってしまうともう見るのに夢中で、おかげで一通り見終わった時にはすっかりくたくたでした…ははは。
ともあれ、全体の紹介等は多分他のブロガーの皆様がこれからしてくださると思いますので、飛嶋は例によって欲望に忠実に(笑)酒井抱一にターゲットを絞った感想にしたいと思います。また今日の分一回きりではとても済みそうにないので、まずは今回初観覧分を中心に。
・「遊女立姿図」(ファインバーグ・コレクション)
画集等で存在自体はお馴染みでしたが、今回初めて出会った作品。実を言えば浮世絵はあまり興味のない分野なのですけれど、肉筆画はものによるようで、この絵も素直に綺麗だなと思いました。(しかし『新潮日本美術文庫』では某会社所蔵になってるんですが、一体いつ海外流出したんですかこれ…)
・「月に秋草図屏風」(山種美術館)
意外や意外、山種はこれまで随分通っているのに、何と今回初観覧です。抱一にしては非常にリアルなタッチの鶉がとても可愛らしく、金地にどーんと映える(笑)アーモンド形の黒い月も印象的。
・「雪月花図」(MOA美術館)
MOAは光琳の紅白梅図目当てで何度か行ってるので、この絵は割合見る機会に恵まれています。琳派というより円山四条派風ですが、特に山桜の何ともいえない風情が素直に綺麗で、大好きな作品の一つです。
・「柿図屏風」(メトロポリタン美術館)
これも初観覧の里帰り作品。予想通り、というか予想以上の渋さでした。(笑) モチーフや構図は抱一らしい一方で、画面全体に漂う荒涼とした侘しさがちょっと珍しい感じです。
・「青楓・朱楓図屏風」
これも存在自体は大分前から知っていますが、見れば見るほど「…本当に抱一?」と疑心暗鬼になってしまう作品。個人的にはこれこそ其一作だという方が納得できるんですが…はてさて。
・「桜に瑠璃鳥図」「菊に小禽図」「柿に目白図」「芦に白鷺図」
おなじみ亀田綾頼賛のシリーズ。単独でなら何度か見ている作品もありますが、5点中実に4点が揃ったところを見るのはさすがに初めてでした。(それだけにフリア本が欠けているのが悔しい;) 元々は後7点あるのでしょうが、今後何かの機会に見つかって欲しいですね。
・「白絖地梅樹下草模様」(国立歴史民俗博物館)
これも意外に見る機会の少ない作品で、久しぶりの再会でした。しかも今回の展示では着物の前の方からも見ることが出来るので、また印象が違って見えて面白かったです。(ちなみに光琳の冬木小袖も同様でしたが、こちらは帯の跡の痛みがちょっと目立ってました。^^;)
ところで一応図録も買って一通り目を通しましたが、案の定というかやっぱり抱一さん、「お殿様らしい我侭で其一や周囲の人々を振り回したに違いない」なんて書かれてました。どうも東博の皆様は抱一に何やら含むところがあるようですが(^^;)、その我侭?のおかげで光琳研究は今でも大いに恩恵に預かってるんですから、そこのところはもう少し素直に感謝してくださいよー。(いや確かに色々思い込み激しいところもあったようですけどね)
またもうひとつ、「其一の止まる時間」と題する小論の最後に、かの「夏秋草図屏風」の製作を手がけたのは其一ではないかと匂わせるような一文がありましたが、これは非常に気になります。あれは何しろ光琳作「風神雷神図屏風」の裏絵として描かれたという代物で、ましてや抱一は光琳の熱烈な追っかけであの絵の模写までしてるんですから、そんな人生でも恐らく最大級の栄誉を(いかに有能な弟子だったとしても)当時30にもならない若い其一に譲ったとはちょっと信じられないのですよね。また私が抱一の絵で(とりわけ問題の夏秋草図で)目を惹かれる点の一つが金泥を使った細い線(水流や葉脈など)なんですが、あのしなやかな優美さは其一の直線的なシャープさとは随分違うと感じるのですけれど、どうなんでしょう?
ともあれ、今月21日から出品予定の「十二ヶ月花鳥図」(ファインバーグ・コレクション)もその意味では何か其一っぽい作品がちらほら混じってるので(笑)、今後の研究と評価が気になるところです。今回宮内庁本等他の十二ヶ月花鳥図はあいにく出ませんが、もう一つくらいシリーズ全部揃ったものと並べてみたら、きっと面白かったでしょうね。(特に畠山記念館本はなかなか揃って見られないので、今後に期待)
以上、抱一以外にもたくさんの素晴らしい作品を心行くまで堪能した後、本館常設展の琳派小特集も見てきました。しかし光琳や乾山、俵屋宗雪等はともかくとして、尾形宗謙の書と抱一の手紙があったのにはびっくり仰天、思わずガラスケースに張り付きそうになってしまいました。(笑) 特に宗謙の書の美しいことといったら、光悦にも引けを取らないような見事さでこれまた惚れ惚れです。(さすが光琳と乾山の父というべきか、血は争えないですねー) 平成館の特別展とはまた一味違う面白さなので、こちらもぜひお見逃しなく(^^)

(尾形宗謙作「和歌巻」部分。光悦流の素晴らしい達筆でした)
そうそう、最後に久しぶりでミュージアムショップへ行ってびっくり仰天したのですが、何と光琳作冬木小袖のミニチュアがあるのですね! とても綺麗で可愛くて欲しい〜!と思ったのですが、お値段実に5万円…そ、それはちょっと厳しい…;(5千円の仁清作茶壷でさえためらってるのに。涙)
Date:2008/10/03 23:16
お待ちかねの大琳派展、いよいよ来週からですね。今回はちょっと無理して休暇をもぎとったので、私としてはかなり珍しい初日観覧です。最初にフリーパスの申込をしなければならないので一番乗りは無理ですが、もう今からわくわくどきどきですね。
さて、東博のHPにもようやく出品一覧が出ましたが、リストを見て改めて呆然。え、あれも来るの、これも出るの!?というくらいに有名作品が目白押し、しかも画集ではよく見る割になかなか実物にお目にかかる機会のないものも多くて、いや本当に楽しみです。さすがに展示替えも多いですが、今回はもうもうはりきって毎週通っちゃおうか(!)というくらいの勢いなので、必ず全点制覇するぞー!
で、何と言っても一番の注目は例によって酒井抱一です。というわけで、飛嶋的今回の注目は以下の通り。
・「観音像」(京都・妙顕寺蔵)
光琳百年忌の供養に描かれた作品。実物は初めてです。
・「禊図」(ボストン美術館)
光琳作の伊勢物語絵の模写。これが里帰りするとは…!
・「新撰六歌仙・四季草花図屏風」(個人蔵)
これは画集でもあまり見た覚えがないので、とても気になります。
・「夏秋草図屏風」「紅白梅図屏風」「波図屏風」
多分10年ぶりの、大作銀屏風三点勢揃い。(ただし紅白梅図と波図は時期が合いません;)
・「月夜楓図」(静岡県立美術館)
ネットではお馴染みだった作品。今回初観覧です(^^)
・「柿図屏風」(メトロポリタン美術館)
これもネットでしか見られなかった作品。ちょっと渋め。
・「青楓・朱楓図屏風」(個人蔵)
抱一にしてはかなり大胆で派手め。どちらかというと其一作のような気も…
・「十二ヶ月花鳥図」(ファインバーグ・コレクション)
今回最大のサプライズ。多分日本初公開ですよね!?(大興奮)
・「原羊遊斎蒔絵下絵帖」(大和文華館、ボストン美術館)
これもなかなか見られない貴重品。…やっぱり頁替もするんでしょうか。
ついでながら、抱一以外で気になるのは↓こちらです。
・宗達「伊勢物語・芥川」(大和文華館)
有名な割に意外と会えない作品。楽しみです!
・光琳「三十六歌仙図屏風」(メナード美術館)
よく数えると35人しかいない絵。(笑) 抱一の模写はフリア所蔵で見られないんですよね…
・光琳「波図屏風」(メトロポリタン美術館)
今回一番仰天した里帰り作品。うわー、ホントに抱一の波図と一緒に見られるんだー!!
以上挙げた他にも、よく見るお馴染みの作品もたくさんで、これだけの数が一堂に会するというのはやはり圧巻ですね。想像しただけでもくらくらしそうで、来週が待ち遠しいです。(^^)
Date:2008/09/30 22:56
先日の源氏展についてコメントをいただきましたので、今日はちょっとそれに関する話などしてみようと思います。
平安時代の装束についてお勉強となると、美術展のグッズコーナーなどでもよく「かさねの色目」あたりを見かけます。ちなみに飛嶋も持っていますが、こういう本は文字通り「色目」の見本こそ網羅しているものの、それを実際の衣裳にしたらどんな感じになるかはちょっと判りにくいのですね。
というわけで、「これじゃ全然想像できないよ!」という方に、飛嶋のお勧め本をご紹介します。
文庫本と侮るなかれ、私が知る限り、源氏物語に登場する衣裳の紹介本ではもっとも判りやすく楽しい本です。ある程度物語についての基礎知識は必要ですが、カラー口絵には紫の上や明石の君などの衣裳の袖口を再現した写真が載っていて、これが本当に「ああ、あの色目が着物になるとこういう風になるんだ」というのがよく判ります。
また他にも、桐壺更衣の衣裳はいわゆる十二単よりももっと唐風だったのではないかとか、細長とは一体どんな衣裳だったのかとか、花嫁衣裳はあったのかとか、ある程度古典に馴染んでいるつもりの読者にも目から鱗が落ちるような話が結構あって、勉強にもなる上読み物としても楽しい本です。現在はちょっと手に入れにくいようですが、PHP文庫ならブックオフあたりで探すと案外見つかるかもしれませんね。
こちらはもう少し専門的な内容ですが、とはいえ中公新書ですから比較的読みやすい本です。平安時代の色彩感覚や、枕草子から伺える清少納言の美意識などに触れた後、いよいよ本命という感じで登場する源氏物語の色彩論は、他では読んだことのない刺激的で面白いものでした。
私がとりわけ驚きだったのは「光源氏はどんな色の衣裳を着ていたか」に関する部分で、結論から言ってしまいますと、晴れの装束は意外に少ないのです。美男の代名詞として名高い光源氏ですが、紫式部は彼の美貌を表すのに贅沢で華やかな衣裳を用いるのではなく、むしろ鈍色(濃いグレー)の喪服やありきたりな白い直衣(白は直衣の一般的な色)を纏わせているのですね。やつれた喪服姿さえ艶に美しいとか、白い衣裳をしどけなく纏っている姿が優美であるとか、そういうモノトーンの姿を作者は源氏を最も引き立てるものと考えていたようです。…何だかちょっと、パトロンの奥方が参加する衣裳比べで黒羽二重に白無垢の衣裳をコーディネイトしたという、有名な光琳の逸話を連想させますね。(笑)
ところで、実は飛嶋自身、一度十二単を着たことがあります。
さすがに本格的な着付けではありませんでしたが、2003年に京都・仁和寺で開催された十二単フォーラムで、一応正式な裳唐衣姿をさせていただきました。しかしこの日は5月だというのに暑いの何の、30度という気温の中であの重い衣裳を着ているのはかなり大変で、後半はのぼせかけて突っ伏していた記憶しかありません。(笑) しかも袴の裾をさばくのに苦労したせいか、翌日は太ももが筋肉痛になってしまいました。(^^;)
なお今年の5月、京都文化博物館の源氏物語展でも久々に着付け体験をやってましたが、その時見た中に以前飛嶋が着たのとそっくり同じ色・柄の衣裳があってびっくりしました。あのフォーラムで使われた衣裳は色も柄もかなりたくさんあったはずなんですが、もしかすると本当に私が着た衣裳そのものだったかも…?